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広島高等裁判所松江支部 昭和24年(控)162号 判決 1950年6月21日

被告人

山根相助

主文

原判決中被告人に対する関係部分を破棄する。

被告人を懲役三月に処する。

領置にかゝる燐酸コデイン八瓦(証第一四号)塩酸コカイン注射液一CC(証第一五号)アヘン吐根散十三瓦(証第一六号)はこれを沒收する。

理由

弁護人辻富太郞の控訴の趣意第一点について

(イ)  原判決摘示の第一(一)乃至(三)の事実について考察するに本件訴訟記録及び原審において取り調べた証拠を綜合すれば被告人は原審相被告人森本準二と共謀の上売藥の販売を爲さんがため被告人において些か医術の智識経驗を有することを奇貨とし島根縣衞生部又は保健所派遺の医師なるが如く裝い患者を診察した上その病状に適應すると思われる売藥を相手方をして買取らしめたものであることを窺知するに充分でありかような場合にはそれが医師法第三十一条違反の罪を構成するは格別他に詐欺罪を構成しないものと解するを相当とするところ原審これを目して詐欺罪に問擬したことは事実の誤認あるか又は法律の適用を誤つたものと言わねばならぬ。而して右は判決に影響を及ぼすことが明かであるから原判決はこの点において到底破棄を免れない。論旨理由あり。

同第二点について

(ロ)  医師法第十七条所定の医業とは同法の趣旨に照らし反覆継続の意思を以て診察治療等の医療行爲を爲すを指称するものと解するを相当とし弁護人所論のように病人を診療してこれにより必ずしも生活資料を得るを要しないものと言わねばならぬ。而して本件訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠を綜合すれば原判決摘示の第二の事実について被告人は売藥の販売を爲さんがために反覆継続の意思を以て患者の病状を診察したものであることを窺知するに充分でありこれはまさしく右に所謂医業であることは論をまたないからこの点に関する弁護人の論旨は理由がない。

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